地球環境情報学研究室
室内実験

室内実験

基礎も最先端も学ぶ

地球環境情報学研究室の実験は、秋田大学と東京大学大気海洋研究所の両方で行われています。私たちの研究室では、秋田大学の実験装置を使った堆積物学的な実験や、東京大学の最先端のレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(LA-HR-ICP-MS)に至る様々な手法を使って研究を行なっています。地球環境情報学研究室のメンバーは基礎をしっかり理解しながら、最新発展技術を経験することで、基礎から最先端の分析まで学ぶ環境で研究を進めています。

主な実験法

堆積物学実験

粒度分析、炭酸カルシウム分析、有機炭素測定などの堆積物学実験は堆積物コア試料の主要な手法です。この作業は、堆積物コアの採取後、堆積速度を推定し適切な間隔で分取された試料を使って分析を行います。炭酸カルシウム分析やX線回折分析のために一部のサンプルを残すとともに、63 µm 以上と以下の試料について分取します。

X線回折分析

X線回折法(X-ray diffraction: XRD)を用いて、サンプルに含まれる鉱物を同定します。この手法を使って私たちは現在、北東オーストラリアの縁辺部の大陸斜面に堆積している炭酸カルシウムの鉱物変化を調べています。堆積物中の方解石、高マグネシウム方解石やあられ石の割合の変化は、続成作用とよばれる堆積物中での組成変化を示し、長期的な環境変動を表す指標となります。すなわち氷期・間氷期周期に関連している海水準変動を復元したりすることが可能です。

蛍光X線分析

XRD分析で堆積物にどんな鉱物が入っているか同定しながら、蛍光X線分析(X-ray fluorescence: XRF)を行うと、どんな元素(主要元素)が堆積物試料の中に入っているかという情報を得ることができます。堆積物がどこから来たのか起源を解明することも可能なのです。具体的には、海洋底から採取された堆積物にチタンやアルミを多く含んでいる場合、海洋の表層で作られた堆積物ではなく、河川や風を通して運ばれてきた陸源の堆積物だということがわかるのです。

微化石実験

恐竜のような大型化石ではなく、私たちが使っているのは、海や湖にたくさん存在する植物プランクトンなどの微化石です。どのような種類の微化石がどれだけ存在しているか(群集組成)という情報や殻の化学成分変化についての情報を使うと、過去の環境の歴史が保存されているためです。地球環境情報学研究室では、微化石の化学分析を行い、年代や環境の情報を得らています。特に、殻の科学分析については、微量の試料でも測定できる装置を使って、安定同位体、微量元素や放射生炭素を分析して高精度な過去の環境復元を行なっています。

安定同位体分析

東京大学大気海洋研究所の白井厚太朗准教授と共同で微化石の酸素と炭素安定同位体の高解像度な分析を行っています。酸素同位体比からは、過去のグローバルな氷床量変動や海水温変動などが推定できます。

微量元素分析

東京大学大気海洋研究所の横山祐典教授と共に、微化石の微量金属について測定を行なっています。誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)やレーザーアブレーションICP-MS(LA-ICP-MS)を用いて、主要元素と微量元素を同時測定して、詳細な古環境変化を復元しています。例えば、海洋の動物プランクトン(浮遊性有孔虫)の殻のマグネジウムとカルシウムの割合は、表層の水温を反映しているので、古水温の変化を細かく復元できます。同じ試料の酸素同位体も測定することで、かつての海水の総合的な情報を採取でき、細かな環境復元が可能となるのです。