水素製造のための水電解電極触媒

近年,温暖化や異常気象が多発していることから,CO2の削減が必須とされています。我が国の電気エネルギーの約8割は,化石燃料(石油,石炭,天然ガス)から得られているため,風力や太陽光などの自然エネルギーへの転換が欠かせません。しかし,自然エネルギーは不安定であり,「電気をたくさん取り出せるとき」と「電気を必要とするとき」がマッチしません。そのため,電気エネルギーを化学エネルギーとして保管するエネルギーキャリアという概念があります。つまり,自然エネルギーから獲得した電気エネルギーを用いて水を電解し,水素を製造します。この水素を色々な場所で活用すれば,化石燃料からの脱却できると期待されています。

PEFCカソード触媒

水電解によって水素を製造することができます。この水素の使用方法として注目されSているのが燃料電池です。燃料電池にはいくつか種類がありますが,固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell, PEFC)が最も有望とされています。しかしながら,多くの家庭や車両に搭載するには,電極触媒として必須であるPtの使用量を低減する必要があります。当研究室では,合金化や窒化物添加によって,Ptの酸素還元活性を高めることでPt使用量の低減を目指しています。

アンモニア酸化電極触媒

燃料電池を自動車に搭載する際,高圧で水素を充填したボンベを用います。水素ガスは,漏出の際の危険性が高く,一般の自動車に水素を用いるのは難色を示されるケースが多いのが現状です。そのため,より安全で取り扱いが容易なアンモニア(NH3)に変換し,これを燃料とすることが想定されます。すなわち,アンモニアを燃料電池の燃料に用いるということです。これを,直接アンモニア型燃料電池(Direct Ammonia Fuel Cell, DAFC)と呼びます。しかしながら,水素にくらべてアンモニアからは取り出せる電気量が少ないため,本研究室では合金化や窒化物・酸化物添加によって,Ptの酸素還元活性を高めること目指しています。

CO2電解還元カソード

CO2削減を進めている間(過渡期)は,CO2排出を止めることはできません。また,様々な産業でCO2の削減をゼロにすることは極めて困難です。そこで,どうしても出てしまうCO2を,有用な物質に変換する試みがあります。色々な手法がありますが,当研究室では電気化学的な手法でCO2を還元し,低温型ではメタン(CH4)やメタノール(CH3OH),高温型では一酸化炭素(CO)に変換しています。このときに用いる高活性なカソード触媒を探索しています。

Zn電解採取用不溶性アノード

亜鉛は自動車や家電製品,構造物などの表面処理や部品として幅広い用途に用いられています。秋田県は,国内最大級の亜鉛生産拠点であり,日本のZn使用量の約1/3を湿式法で生産しています。この湿式法は,大量の電力を必要とするため,脱炭素社会に向けて低エネルギー化は不可欠です。そこで,当研究室では,種々の酸化物,複合酸化物,窒化物を駆使してZn生産に要する電圧の低減を目指しています。