研究テーマ

1.温度によって目開きを変えられる分子篩吸着剤の合成とそれを用いた分離法の開発                                   (R3-5 科研費 基盤研究C)

教育方針イメージ

 多くの分子が混合した系から特定の分子のみを選択的に単離・精製するためには,通常,その分子が有する化学的性質(例えば,極性官能基との親和性,等電点,溶解度など)の差異を利用する。しかしながら,このような化学的性質の僅かな差を利用することは工業的な分離目的においては容易な操作ではない。一方,分子をその大きさにより篩分けすることができれば,比較的簡便な設備で達成可能である。そこで当研究室では,水溶液の温度を変化させることにより,細孔入口径の大きさを制御することが可能な吸着剤の開発に取り組んできた。  ここでは,比較的嵩高い分子であるアミノ酸やタンパク質,糖などにも適用できるようにメソポーラスシリカを吸着剤として使用した。そしてその表面に感温性高分子であるポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)を被覆した。その結果,PNIPAMの相転移温度を境に,低温では分子を可逆的に吸脱着し,高温では分子を全く吸脱着しない性質を持つ材料の開発に成功した。


2.新規温度応答性分離膜の開発とその分子透過特性(H24-26科研費 基盤研究(C))

目標イメージ

 温度応答性吸着剤の合成技術を分離膜の開発に応用した。感温性高分子(PNIPAM)を多孔質シリカ膜上に固定化し,メチルオレンジをゲスト分子とした場合の透過量の時間変化を検討した。その結果,基板として使用した多孔質シリカ膜単独では,メチルオレンジ透過量は時間と共に単調に増加した。温度応答性膜の場合は温度によってメチルオレンジ透過挙動は大きく異なった。このように温度制御により分子の透過挙動を変化させられる分離膜の開発に成功した。現在,PNIPAMとアクリルアミドなどを共重合させることにより温度応答性を制御することを試みている。


3.バイオオイルの接触改質用触媒の開発(H23-26受託研究(東産商))

 バイオマスを急速熱分解して得られるバイオオイルは含酸素有機化合物を多く含むため,そのままでは燃料として使用することはできない。従って,比較的安価かつ簡便な方法による脱酸素技術の開発が望まれている。当研究室では,秋田県でも多量に採取できるゼオライトに注目し,それを担体とした接触改質触媒の開発に取り組んでいる。現在,ゼオライト系触媒を使用することで,含酸素有機化合物中の酸素の大部分を水として除去できることが明らかとなっている。


4.石炭・バイオマスのガス化触媒の開発

 エネルギーの安定供給の観点から石炭は今後も主力エネルギー源であることは疑う余地はない。また,地球温暖化防止の観点からはカーボンニュートラルであるバイオマスの積極的利用も不可欠である。これらエネルギー源の有効利用法の一つに,水蒸気と反応させて水素や一酸化炭素などの可燃性気体に変換するガス化反応がある。当研究室では,900℃以下の低温でガス化できる低コスト触媒の開発を目的として研究している。触媒に求められる機能としてはチャーガス化の促進は言うまでもなく,同時に揮発分放出時に発生するタールの分解・改質機能も併せ持つ方が望ましい。このような観点から,現在,カルシウム系,鉄系天然物の触媒としての利用の可能性を検討している。


5.高勾配磁気分離システムを用いたセシウムの除去(H25-共同研究(三和テッキ))

 東日本大震災後,放射性セシウムの除去は急務となっている。これまでの研究で,水中に溶存しているセシウムが天然ゼオライトで除去可能であること,他のイオンが共存していてもセシウムに対する選択性が高いことを明らかになっている。一般に吸着剤の回収にはろ過や遠心分離法等が用いられるが,これらの方法では時間がかかりすぎる,微粒子を回収できないなどの問題がある。この吸着剤回収に関する欠点を克服するために,高勾配磁気分離法を用いる。本研究では,高勾配磁気分離システムに天然ゼオライトを適用するために,表面改質法の検討や新規凝集剤の開発を目的としている。