設立趣意

 最近の航空産業のグローバルな成長・発展は目ざましい一方で、航空輸送需要の増加、原油価格の変動リスク及び航空輸送事業者の多様化等により、環境への影響や運航コストの低減が世界的な課題となっている。時代は、航空機におけるエネルギーの有効活用や、より一層の効率改善を実現する技術革新の潮流を生み出し、ボーイング787に代表されるように複合材の活用や、航空機システムの電動化といった大きな変革を引き起こした。更なる将来は航空機エンジンは効率がしだいに限界に近づくとともに、航空輸送増加によるパイロット不足、空の渋滞、事故の増加などの深刻な問題がモビリティの変革を促し、電動推進の実現へと踏み出そうとしている。電動化は電動への技術革新から電動による社会変革へと進化し、航空機を構成する多くのシステムや装備品が重要な役割を担うこととなった。電動化は単に電気・電子にかかわる分野だけでなく、抽気・抽出力や油圧・空気圧系統、機体姿勢制御やエンジン推力とのかかわり合いも深く、従来型の技術改善の延長線上にある連続的な技術革新ではなく非連続的技術革新と位置づけられる技術である。電動化技術を核に航空機・エンジンに関連するあらゆる工学・技術を結集し、航空機システム全体として研究を推し進めなければならない時期にきていると考えられる。

 一方、欧米ティア・ワン・システムメーカーの強大化・システム囲い込みや、認証などの高い障壁により、日本の航空機装備品業界は欧米メーカーの傘下としての位置づけからなかなか脱却できない状況にある。しかし、航空機システムの電動化は、我が国のように一般産業基盤における電動化製品・部品・技術で海外に対する競争力を持ちうる分野であり、日本にとってもすそ野の広い産業基盤になりうると思われる。

 秋田県においては、製造品出荷額等の約4分の1が電子部品・デバイス関係であり、電動化のコア部品であるモーターの性能を飛躍的に向上させる技術を持つ企業がある等、航空機システムの電動化に寄与できる環境が整いつつある。また、秋田県の総合戦略で航空機産業の振興と専門人材の育成を重点プロジェクトで掲げており、新たな航空機産業のきっかけとなりうる航空機システムの電動化の研究開発に参画することは秋田県の方向性とも合致するものである。

 この時にあたり、航空機の電動化実現に寄与する研究開発拠点を秋田県に創生し、航空機分野における産業化の基盤とするため、航空機電動化の研究推進、同領域に関する優れた人材の育成、産学官金連携の推進を目的に本会を設立することとする。

2018年4月10日

共同代表

  公立大学法人秋田県立大学大学院システム科学技術研究科長
  国立大学法人秋田大学大学院理工学研究科長

(2022年3月23日 改訂)

規約

  アキタ・リサーチ・イチシアチブ規約

(2023年3月20日 改訂)